相続財産調査のやり方と必要書類|不動産・預貯金・株の探し方

相続財産調査のやり方について、相続世代の男性が、さわやかな日本人弁護士に相談している様子 相続手続き

「どこに何を請求すればいいのか、全然わからなくて」——相続財産の調査は、多くの方が手探りで始めます。不動産・預貯金・株式など、財産の種類によって調査先も必要書類もまったく異なるため、「一か所に問い合わせれば全部わかる」というわけにはいきません。この記事では、財産種別ごとに「どこへ」「何を」「どんな書類を持って」請求するかを整理し、財産調査のロードマップとして活用できるようにまとめました。

財産種別・調査機関別のロードマップ

相続財産調査で最も時間を取られるのは「どこに何があるかわからない」という状況です。まず遺品(通帳・郵便物・権利証・確定申告書など)から手がかりをつかみ、財産の種類ごとに調査機関へ問い合わせる、という2段階のアプローチが基本になります。


📌 財産調査の2ステップ
① 自宅の遺品・書類から財産の「手がかり」を集める
② 財産種別ごとに、対応する調査機関へ必要書類を持参・郵送して照会する

財産の種類主な調査先手がかりとなる遺品
不動産市区町村役場・法務局(登記所)固定資産税納税通知書、権利証、登記識別情報通知
預貯金各金融機関の窓口通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物
上場株式・投資信託証券保管振替機構(ほふり)、証券会社取引残高報告書、配当金通知書、郵便物
非上場株式発行会社(直接問い合わせ)株主総会招集通知、配当金支払通知書
生命保険各保険会社保険証券、保険会社からの郵便物
借金・ローン信用情報機関(CIC・JICC・全銀協)借用書、ローン明細、クレジットカード

全財産調査に共通する必要書類

どの調査機関に問い合わせる場合も、「被相続人が亡くなったこと」と「請求者が相続人であること」を証明できる書類が必要です。事前にセットを揃えておくと、各機関への請求がスムーズになります。

書類取得先用途
被相続人の除籍謄本(死亡が記載された戸籍)本籍地の市区町村役場死亡の証明
相続人全員の戸籍謄本各本籍地の市区町村役場相続関係の証明
請求者の印鑑証明書住所地の市区町村役場本人確認(3か月以内のものが多い)
請求者の本人確認書類—(運転免許証・マイナンバーカードなど)窓口本人確認

💡 ポイント:法定相続情報一覧図を取得すると、一つの書類で相続関係を証明できるため、複数機関への提出が大幅に楽になります。法務局で無料で作成・取得できます。

不動産の探し方と調査手順

固定資産税納税通知書と名寄帳で全体像を把握する

不動産の調査で最初に確認するものは、毎年4〜6月に届く固定資産税納税通知書です。添付されている課税明細書に、その自治体が課税している不動産の一覧が記載されています。ただし、非課税の不動産(山林など)は記載されないことがあります。

より確実なのが、市区町村役場で取得できる名寄帳(なよせちょう)です。課税・非課税を問わず、特定の市区町村内で被相続人が所有していた不動産の一覧が記載されています。ただし、市区町村をまたぐ不動産は別々に請求する必要があります。

⚠️ 注意:名寄帳は「市区町村単位」でしか調べられません。被相続人が複数の市区町村に不動産を持っていた場合は、それぞれの役場に個別に請求する必要があります。全国一括で調べる方法は現時点では存在しません。

不動産調査の手順まとめ

  1. 遺品から固定資産税納税通知書・権利証(登記済権利証または登記識別情報通知)を探す
  2. 被相続人が住んでいた可能性がある市区町村の役場で名寄帳を取得する
  3. 不動産が特定できたら、法務局(登記所)で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、権利関係を確認する
  4. 相続税申告が必要な場合は、固定資産評価証明書も取得する
書類取得先費用の目安
名寄帳(固定資産課税台帳)市区町村役場 資産税課無料〜数百円(自治体による)
固定資産評価証明書市区町村役場 資産税課1筆300円程度
登記事項証明書(登記簿謄本)法務局(登記所)・オンライン申請1通600円(窓口)/ 480円(オンライン)

預貯金の探し方と調査手順

遺品からの手がかりと金融機関への全店照会

預貯金の調査は、まず遺品の中から手がかりを探すことから始まります。通帳やキャッシュカードはもちろん、金融機関からの郵便物(利息のお知らせ、残高通知など)、確定申告書の「利子所得」の欄なども重要な手がかりになります。

金融機関が特定できたら、その金融機関の窓口へ出向き、残高証明書取引明細書の発行を依頼します。同じ銀行内であれば、他の支店の口座も調べてもらえる「全店照会」が可能です。

⚠️ 注意:全国の金融機関の口座を一括で調べるシステムは存在しません。心当たりのある金融機関を一つひとつ確認する地道な作業になります。ゆうちょ銀行(郵便貯金)も忘れずに確認しましょう。

金融機関に提出する書類

  • 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本(除籍謄本)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 請求者の印鑑証明書・本人確認書類
  • 通帳・キャッシュカード(手元にある場合)
  • 金融機関所定の発行申請書(窓口で入手)

💡 ポイント:残高証明書は「相続開始日(死亡日)時点」の残高で発行してもらいましょう。相続税の申告に使用します。また、利息計算書(経過利息)も一緒に発行してもらうと手続きが一度で済みます。

株式・投資信託の探し方と調査手順

ほふり(証券保管振替機構)への開示請求が有効

株式や投資信託の調査で、取引していた証券会社が不明な場合に有効なのが、証券保管振替機構(通称:ほふり)への開示請求です。上場株式を保有していた場合、その株式は必ず証券会社や信託銀行に開設された口座で管理されており、ほふりに申請することで「どの証券会社・信託銀行に口座があるか」を知ることができます。

調査対象調査先補足
上場株式(証券会社が不明)証券保管振替機構(ほふり)に開示請求手数料6,050円(税込)。郵送申請のみ
上場株式(証券会社が判明)各証券会社の窓口・コールセンター残高証明書・取引明細書を発行依頼
非上場株式発行会社に直接問い合わせほふりでは調査不可。株主総会招集通知が手がかり
タンス株(株券電子化前の現物株券)株主名簿管理人(信託銀行)に問い合わせ現物株券を保管している場合は単元未満株の可能性あり

株式調査の手順まとめ

  1. 遺品から取引残高報告書・配当金通知書・証券会社からの郵便物を探す
  2. 証券会社が不明な場合は、ほふりへ開示請求書を郵送申請する(手数料6,050円)
  3. 証券会社が特定できたら、各証券会社に残高証明書・取引明細書の発行を依頼する
  4. 非上場株式・タンス株は、発行会社や信託銀行に個別に問い合わせる

⚠️ 注意:ほふりへの開示請求で分かるのは「口座がある証券会社名」のみです。実際の保有銘柄や株数は、各証券会社へ個別に問い合わせる必要があります。また、非上場株式はほふりでは調査できません。

負債(借金・ローン)の調査も忘れずに

相続財産にはプラスの財産だけでなく、借金・ローン・未払い税金といったマイナスの財産も含まれます。負債を見落とすと、相続後に思わぬ請求を受けるリスクがあります。

借金の調査には、信用情報機関への開示請求が有効です。CIC(クレジット・信販系)、JICC(消費者金融系)、全国銀行個人信用情報センター(銀行系)の3機関に照会すると、被相続人が利用していた借入・クレジット情報を確認できます。

信用情報機関主な対象手数料
CIC(シーアイシー)クレジットカード・信販会社1,000円(インターネット)
JICC(日本信用情報機構)消費者金融・カードローン1,000円(スマートフォンアプリ)
全国銀行個人信用情報センター(KSC)銀行ローン・保証会社1,679円(郵送申請)

💡 ポイント:遺品の中にある「督促状」「請求書」「クレジットカードの利用明細」もマイナス財産の手がかりになります。確定申告書の「事業所得」「不動産所得」欄に記載された借入金にも注意してください。

財産調査後に作成する財産目録

財産調査が完了したら、調査結果を整理した財産目録を作成します。財産目録は法律上の必須書類ではありませんが、遺産分割協議の話し合いの土台として、また相続税申告の準備資料として必要になります。

  • 不動産:所在地、地目・地積・床面積、固定資産評価額、名義
  • 預貯金:金融機関名・支店名、口座名義・口座番号、残高(相続開始日時点)
  • 有価証券:銘柄名・株数・評価額(相続開始日時点の終値)
  • その他の財産:現金、保険、自動車、貴金属など
  • 負債:借入先、金額、借入の目的

まとめ:財産調査は「種類別のロードマップ」で進める

相続財産調査は、財産の種類によって調査先・必要書類・手続き方法がまったく異なります。「一か所に問い合わせれば全部わかる」仕組みはなく、地道に一つひとつ確認していく必要があります。ただし、下記のポイントを押さえれば、効率的に進めることができます。

  • まず遺品から手がかりを集め、財産の「種類」「所在地」「金融機関名」を特定する
  • 共通書類(除籍謄本・相続人の戸籍)は複数部取得しておく
  • 不動産は名寄帳で全体把握→法務局で登記事項証明書を取得
  • 株式の証券会社が不明な場合はほふりへ開示請求
  • 負債の調査も必ず実施し、3つの信用情報機関に照会する

相続手続き全体の流れや必要書類については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご参照ください。

👉 【完全ガイド】相続手続きの流れと必要書類を徹底解説

👉 法定相続情報一覧図の作り方と申出手続き|費用・期間も解説

よくある質問

Q1. 相続財産調査を自分でやることはできますか?

はい、可能です。戸籍謄本・除籍謄本を準備すれば、名寄帳の取得や金融機関への照会は相続人本人でも行えます。ただし、調査先の数が多い場合や、不動産が複数市区町村にまたがる場合などは、司法書士や弁護士に依頼すると効率的です。

Q2. 被相続人の銀行口座がどこにあるか不明な場合はどうすればよいですか?

遺品(通帳・キャッシュカード・郵便物)から手がかりを探すのが基本です。それでも特定できない場合は、被相続人がよく利用していた地域の金融機関(地方銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行)に問い合わせてみましょう。全国一括で調べるサービスは現時点では存在しません。

Q3. ほふりへの開示請求とは何ですか?どこで申請できますか?

ほふり(証券保管振替機構)は、上場株式を管理する機関です。被相続人が利用していた証券会社・信託銀行が不明な場合、ほふりに「登録済加入者情報の開示請求」を郵送で申請すると、口座がある機関の名称を教えてもらえます。手数料は6,050円(税込)で、申請書はほふりの公式サイトからダウンロードできます。

Q4. 相続財産調査はどのくらい時間がかかりますか?

財産の種類と数によります。財産が少なく、手がかりが明確な場合は1〜2か月程度で完了することもありますが、不動産が複数市区町村にあったり、株式の証券会社が不明だったりする場合は3か月以上かかることも珍しくありません。相続放棄の検討が必要な場合は、3か月という期限があるため、早めに着手することが重要です。

Q5. 相続財産調査で費用はどのくらいかかりますか?

自分で行う場合は、書類の取得費用が主なコストになります。戸籍謄本(1通450円程度)、登記事項証明書(1通600円)、ほふりへの開示請求(6,050円)など、実費合計で1〜3万円程度が目安です。司法書士や弁護士に依頼する場合は、財産の種類・数にもよりますが、5〜20万円程度が相場です。

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