法定相続情報一覧図の作成方法|書き方と注意点を解説

法定相続情報一覧図の作成について悩む相続世代の日本人男性 相続手続き

親が亡くなり、銀行・法務局・税務署と複数の機関に同じ戸籍書類を何度も提出しなければならない——そのストレスを一気に解消できるのが法定相続情報一覧図です。A4用紙1枚で戸籍謄本一式の代わりになるこの書類は、2017年に始まった制度で、費用は無料。しかし「作れた!」と思っても、住所記載の有無や続柄の書き方を間違えると、相続登記や相続税申告で使えなくなるケースがあります。本記事では、法定相続情報一覧図の作成手順を丁寧に解説するとともに、多くの人が見落とす実務上の判断ポイントを詳しく紹介します。

「住所を書くか書かないか」が後の手続きを左右する

「お母さんが亡くなって、不動産の名義変更と銀行の解約を同時に進めようとしたら、法務局に出した一覧図が銀行で使えなかった」——ある50代の方から聞いた話です。原因は、一覧図に相続人の住所を記載しなかったこと。銀行側が住所付きの一覧図を求めていたのに、そのまま提出してしまったのです。


法定相続情報一覧図への相続人の住所記載は任意です。「どちらでもいい」と思いがちですが、この選択が後工程に大きく影響します。

住所記載メリットデメリット・注意点
あり相続登記申請時に各相続人の住民票の提出が不要になる場合がある各相続人の住民票の写しを追加で収集・添付する必要がある。交付後に引越しをしても再申出で住所変更はできない
なし収集書類が少なく済む。住所変更の心配がない相続登記で別途住民票の提出が必要になる場合がある

📌 実務判断のポイント
不動産の相続登記も同時に行う場合は、住所を記載しておくと手続きがスムーズになるケースが多い。銀行口座のみの手続きであれば、住所なしでも支障がないことが多い。手続き予定の機関に事前確認することを推奨する。

法定相続情報一覧図とは何か

法定相続情報一覧図とは、亡くなった被相続人とその法定相続人の関係を家系図のように図示したA4サイズの書類です。法務局(登記所)に申出を行うことで、登記官が認証文を付した「写し」を無料で交付してもらえます。この写しを各機関に提出することで、戸籍謄本一式の束を何度も用意する手間が省けます。

制度が始まる前は、相続登記・銀行の解約・株式の名義変更・相続税申告のたびに、同じ戸籍謄本一式(数千円〜数万円分)を揃えて各機関に提出する必要がありました。現在は法定相続情報一覧図の写しを複数枚同時に取得できるため、複数の手続きを並行して進めることが可能です。

利用できる主な手続き
不動産の相続登記(名義変更)
預貯金の名義変更・解約
有価証券・自動車の名義変更
相続税の申告
年金・社会保険の手続き

⚠️ 注意:相続放棄をした人も、戸籍上は相続人として一覧図に記載されます。実際には相続しない方でも氏名が載るため、銀行など提出先に対して別途相続放棄申述受理証明書を添付することが必要な場合があります。

作成に必要な書類一覧

法定相続情報一覧図の申出には、必ず揃える書類と、状況によって必要になる書類があります。事前に漏れなく確認しておきましょう。

書類取得先備考
被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本本籍地の市区町村必須。複数の市区町村をまたぐことがある
被相続人の住民票の除票最後の住所地の市区町村取得できない場合は戸籍の附票で代替可
相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本各相続人の本籍地の市区町村必須
申出人の氏名・住所を確認できる公的書類運転免許証・マイナンバーカード・住民票の写しなど
各相続人の住民票の写し各相続人の住所地の市区町村一覧図に住所を記載する場合のみ必要

被相続人が結婚・転籍・養子縁組などで本籍地を変えている場合、複数の市区町村から戸籍を順番に取り寄せる作業が発生します。現在はマイナポータルや戸籍の広域交付制度を活用することで、一部の戸籍をまとめて請求できる場合もあります。

法定相続情報一覧図の作成手順(4ステップ)

必要書類が揃ったら、実際に一覧図を作成します。法務局のウェブサイトに相続パターン別のテンプレートが公開されているため、該当するひな形をダウンロードして使うと便利です。

STEP 1:戸籍書類を収集する

被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本を取得します。最新の戸籍から遡って請求するのが基本です。転籍や改製があると、複数の市区町村への請求が必要になることがあります。

STEP 2:一覧図を作成する

A4の白紙(横向きが一般的)に、被相続人と相続人の関係を図示します。手書き・パソコン入力のどちらでも可です。記載する主な項目は以下のとおりです。

  • 被相続人の氏名・最後の住所・生年月日・死亡年月日・本籍(任意)
  • 相続人全員の氏名・生年月日・被相続人との続柄・住所(任意)
  • 作成年月日・申出人の記名・作成者の署名または記名押印
  • 用紙下部に約5センチの余白(登記官の認証文を記載するスペース)

💡 ポイント:法務局ホームページ「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」から、配偶者あり・子のみ・兄弟姉妹相続など、相続人の構成別にテンプレートをダウンロードできる。自分のケースに近い様式を選ぶと作成ミスを防ぎやすい。

STEP 3:申出書を記入して法務局へ提出する

申出書は法務局のウェブサイトからダウンロードできます。申出人の氏名・住所・被相続人との続柄・利用目的・必要な写しの枚数などを記入し、作成した一覧図・必要書類とあわせて提出します。

申出先の法務局は、以下の4つの地を管轄するいずれかを選択できます。被相続人の本籍地・被相続人の最後の住所地・申出人の住所地・被相続人名義の不動産の所在地。窓口への持参のほか、郵送での申出も可能です。

STEP 4:写しを受け取る

申出から交付まで、一般的に1〜2週間程度かかります。法務局の混雑状況によっては翌日に交付される場合もありますが、余裕を持って申出するのが安心です。交付と同時に、提出した戸籍謄本等は返却されます(申出人の公的書類は返却されません)。

続柄の書き方と相続税申告での注意点

法定相続情報一覧図で多くの人が見落とすもう一つの落とし穴が、子の続柄の書き方です。法務局の様式では子の続柄を「子」と記載する選択肢がありますが、相続税の申告に使う場合は「子」ではなく「長男」「長女」「養子」など、戸籍に記載された続柄と同じ表記にする必要があります。「子」では実子と養子の区別がつかないため、税務署側で相続税の基礎控除額の計算(法定相続人の数の確認)ができないためです。

⚠️ 注意:相続税の申告を行う場合は、続柄を「子」と記載した一覧図は使用できません。申出の段階から「長男」「長女」「養子」と戸籍の表記どおりに記載した一覧図を作成してください。作成後の変更はできないため、用途を決めてから作成することが重要です。

また、数次相続(相続が発生した後、遺産分割が完了しないうちにさらに相続人が亡くなった場合)では、亡くなった人ごとに一覧図を別々に作成する必要があります。複数世代にまたがる相続では複数枚の一覧図が必要となるため、注意が必要です。

まとめ:作成前に用途を決めることが最大のポイント

法定相続情報一覧図は、複数の相続手続きを並行して進める際に非常に役立つ無料の制度です。一度申出してしまえば5年間は何度でも無料で再交付を受けられるため、手続きが増えても慌てる必要がありません。

ただし、本記事で解説したとおり、作成時に以下の2点を間違えると後の手続きで使えなくなる可能性があります。

  • 住所記載の有無:相続登記での利用を見越すなら住所ありで申出する
  • 続柄の書き方:相続税申告に使うなら「子」ではなく「長男」「長女」「養子」と記載する

申出前に、どの手続きで一覧図を使うかを整理してから作成に取り掛かることが、失敗のない法定相続情報一覧図作成の最大のポイントです。相続手続きの全体的な流れについては、以下のガイドもあわせてご覧ください。

【完全ガイド】相続手続きの流れと必要書類を徹底解説

相続税の計算方法と節税対策|税理士が教える実践テクニック

よくある質問

Q1. 法定相続情報一覧図の取得費用はいくらかかりますか?

法定相続情報一覧図の写しの交付は無料です。ただし、取得に必要な戸籍謄本等の収集費用(1通数百円)や郵送で申出・受取をする場合の切手代は別途かかります。司法書士・税理士などに代行を依頼する場合は別途手数料(難易度により1〜10万円程度)が発生します。

Q2. 法定相続情報一覧図に有効期限はありますか?

法務局・税務署・登記所に提出する書類としては原則有効期限はありません。ただし、銀行や証券会社など民間機関では独自に3〜6か月の有効期限を設けている場合があります。利用前に提出先に確認することをおすすめします。なお、法務局での保存期間は申出日の翌年から5年間で、この間は無料で再交付を受けられます。

Q3. 相続人が海外在住の場合でも申出できますか?

被相続人および相続人が日本国籍を有していれば、海外在住の相続人がいても申出は可能です。ただし、被相続人または相続人が外国籍で戸籍謄本・除籍謄本が取得できない場合はこの制度を利用できません。また、海外在住の相続人の住所を記載する場合は現地の証明書類が必要になるケースがあります。

Q4. 法定相続情報一覧図は自分で作成できますか?

はい、自分で作成できます。法務局のウェブサイトに相続パターン別のテンプレートと記載例が公開されているため、該当するひな形を参考にA4用紙に作成してください。手書き・パソコン入力どちらでも受け付けてもらえます。不明点は申出前に管轄の法務局に電話で相談することもできます。

Q5. 戸籍謄本の収集が大変な場合はどうすればいいですか?

被相続人が何度も転籍している場合や、相続人が多い場合は戸籍収集だけで数週間かかることがあります。その場合は、司法書士や行政書士に収集と一覧図の作成を依頼する方法があります。また、2024年から始まった戸籍の広域交付制度を活用すると、本籍地以外の市区町村の窓口でも一部の戸籍を取得できるようになりました。マイナポータルを利用したオンライン申請も併用すると便利です。

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