法定相続情報一覧図の作り方と申出手続き|費用・期間も解説

法定相続情報一覧図を日本人弁護士と作成している相続世代の日本人男性と日本人女性 相続手続き

「戸籍謄本の束を何度もコピーして、金融機関ごとに提出する」——相続手続きを経験した方なら、この手間に疲弊した記憶があるのではないでしょうか。法定相続情報一覧図を一度作っておけば、その1枚が戸籍謄本の代わりになり、相続登記・銀行解約・相続税申告を同時に進められます。本記事では、作成前に必ず判断すべき2つのポイントを含む完全な手続き手順を解説します。

作成前に必ず判断すべき2つのポイント

法定相続情報一覧図の作成は難しくありません。ただ、多くの人が「とりあえず作ってしまった」あとで後悔するポイントが2つあります。作成後に変更できない部分があるため、書き始める前に必ず確認してください。


判断①:相続人の住所を記載するか

相続人の住所の記載は任意です。記載しなくても申出は通ります。しかし、この選択には大きなトレードオフがあります。

選択メリットデメリット・注意点
住所を記載する相続登記や遺言書情報証明書の請求時に住民票の添付が不要になる場合がある交付後に住所変更があっても再申出できない。引越し予定がある相続人がいる場合は注意
住所を記載しない住所変更の影響を受けない。後の手続きでも使い続けられる相続登記などの際に各相続人の住民票を別途添付する必要が生じる場合がある

📌 実務判断のポイント
相続登記を同時に行う予定がある、または複数の不動産がある場合は住所記載が有利です。一方、相続人に転居予定者がいる場合や、手続きが長期に及ぶ見通しの場合は、住所なしを選んで住民票を都度添付するほうがトラブルになりません。

判断②:続柄を「子」と書くか「長男・長女」と書くか

続柄の記載も選択制です。戸籍どおりの「長男」「長女」「二男」などで記載する方法と、「子」と記載する方法があります。ただし、この選択によって使える手続きに制限が生じます。

⚠️ 注意:続柄を「子」と記載した場合、相続税の申告で添付書類として使用できません。相続税の申告もまとめて行う予定があるなら、戸籍どおりの続柄(長男・長女・二男など)で記載してください。銀行の相続手続きのみに使う場合は「子」でも問題ないケースがほとんどです。

法定相続情報一覧図とは

法定相続情報一覧図とは、被相続人(亡くなった方)と相続人の関係を一覧にした図に、法務局が認証文を付けた公的な証明書です。2017年5月から始まった「法定相続情報証明制度」によって発行されます。

相続手続きでは通常、金融機関や法務局の窓口ごとに戸籍謄本の束を提出しなければなりません。法定相続情報一覧図の写しがあれば、この証明書1枚で戸籍謄本の束と同じ効力を持つため、複数の相続手続きを同時に進めることができます。

項目内容
発行窓口法務局(登記所)
費用無料(何通でも)
有効期限法令上の定めなし(金融機関によっては独自の期限あり)
保管期間申出日の翌年から5年間(再交付可能)
交付までの期間申出から1〜2週間程度

使える手続きの範囲

法定相続情報一覧図の写しは、次の手続きで戸籍謄本の代わりとして利用できます。

  • 相続登記(不動産の名義変更)
  • 金融機関の預金解約・名義変更
  • 相続税の申告(続柄が「長男・長女」等の場合のみ)
  • 年金等の手続き(遺族年金など)
  • 株式・証券の相続手続き

💡 ポイント:一部の地方銀行や信用金庫では、独自の書類様式を要求するため法定相続情報一覧図だけでは対応できない場合があります。事前に各金融機関に確認しましょう。

必要書類の一覧

申出に必要な書類は、相続関係の複雑さによって若干異なります。基本的な必要書類は以下のとおりです。

書類取得先費用目安備考
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍本籍地の市区町村役場1通450〜750円複数になることが多い
被相続人の住民票の除票最後の住所地の市区町村役場300〜350円程度廃棄済みの場合は戸籍の附票で代替
相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本各相続人の本籍地の市区町村役場1通450円現在のものでOK
申出人の本人確認書類のコピー手元にあるもの無料運転免許証両面・マイナンバーカード表面など。「原本と相違ない」旨を記載し記名
各相続人の住民票(住所記載を希望する場合のみ)各相続人の住所地の市区町村役場1通300〜350円程度任意
申出書(所定様式)法務局窓口またはHPでダウンロード無料

📌 戸籍収集コストの目安
被相続人が転籍(本籍地の移動)を繰り返している場合、出生まで遡るために5〜10通以上の戸籍が必要になるケースもあります。戸籍謄本1通450円、除籍謄本・改製原戸籍1通750円が目安です。代理収集を含む書類収集だけで合計5,000〜15,000円程度かかることを見込んでおきましょう。

法定相続情報一覧図の作り方

法定相続情報一覧図は、法務局のホームページで公開されているひな形をダウンロードして作成するか、ひな形を参考にA4用紙に自作します。手書きでも構いませんが、パソコンで作成するほうが修正しやすく、見た目も整います。

記載事項

一覧図に記載が必要な情報は次のとおりです。

  • 被相続人:氏名・生年月日・死亡年月日・最後の本籍地・最後の住所
  • 各相続人:氏名・生年月日・続柄(住所は任意)
  • 右上に「被相続人 ○○○○ 法定相続情報」と記載
  • 作成年月日・申出人の氏名・連絡先

作成上のルール

  • 用紙はA4サイズを使用する
  • 用紙の下5センチは空白にする(法務局の認証文が押される欄)
  • 図形式のみが利用可能(箇条書き・列挙式は認められない)
  • 相続放棄者・相続欠格者も記載する(相続廃除された者のみ記載不要)
  • 二番目の男子は「二男」と記載(「次男」ではなく「二男」が正しい表記)

⚠️ 注意:一覧図の内容に誤りがあると法務局から補正を求められ、やり直しが発生します。特に「生年月日」「本籍地の表記(戸籍どおりに記載)」「続柄の表記」は戸籍を見ながら正確に転記してください。

申出手続きの流れ(STEP別解説)

STEP1:必要書類を収集する

まず被相続人の出生から死亡までの戸籍一式を収集します。本籍地が遠方の場合は郵便請求も可能です。役所によって請求方法が異なるため、各市区町村役場のホームページで確認してください。

STEP2:法定相続情報一覧図(原案)を作成する

収集した戸籍を基に一覧図を作成します。法務局のホームページから様式をダウンロードすると、配偶者と子のパターン・兄弟姉妹が相続人のパターンなど複数の記載例が公開されているため、自身の相続関係に近いものを参考にしてください。

STEP3:申出書を記入する

法務局のホームページから申出書様式(WordまたはPDF)をダウンロードし、次の事項を記入します。申出書には「利用目的」欄があり、相続登記・預金解約・相続税申告・年金手続きなど、使う手続きにチェックを入れます。複数の目的がある場合は複数選択できます。

また「必要な通数」も申出書に記載します。何通でも無料で発行されるため、必要な手続き先の数を見積もり、少し多めに申請しておくと安心です。一般的な相続手続きであれば5通程度が目安です。

STEP4:管轄の法務局へ申出する

申出先は次の4か所のいずれかを管轄する法務局から選択できます。

  1. 被相続人の本籍地
  2. 被相続人の最後の住所地
  3. 申出人の住所地
  4. 被相続人名義の不動産の所在地

実務的には「申出人の住所地」を管轄する法務局が最も行きやすい場合が多いです。郵送による申出も可能です。郵送で交付を受ける場合は、返信用封筒と郵便切手(またはレターパック)を同封してください。戸籍謄本の原本を郵送するため、レターパックの使用が安全です。

STEP5:法定相続情報一覧図の写しを受け取る

申出から交付までの期間は、早ければ翌日、一般的には1〜2週間程度かかります。交付と同時に、申出時に提出した戸籍謄本・除籍謄本等の原本が返却されます(申出人の本人確認書類のコピーは返却されません)。

費用の全体像

法定相続情報一覧図の発行自体は無料ですが、書類収集や申出にかかる実費が発生します。自分で手続きする場合と専門家に依頼する場合の費用感を確認しておきましょう。

費用項目金額目安備考
法定相続情報一覧図の発行手数料無料何通でも無料
戸籍謄本(1通)450円相続人分の現在戸籍
除籍謄本・改製原戸籍(1通)750円被相続人の出生〜死亡分
住民票の除票300〜350円程度市区町村による
書類の郵便請求費用数百円〜本籍地が遠方の場合
申出・交付の郵送費用数百円程度郵送希望の場合
自分で行う場合の実費合計目安3,000〜15,000円程度戸籍の通数による
司法書士・行政書士等への代行費用10,000〜100,000円程度複雑な相続関係ほど高額

💡 ポイント:相続手続きが銀行口座1〜2件だけであれば、法定相続情報一覧図をあえて作成する必要はない場合もあります。戸籍謄本を直接提出する従来の方法で対応できます。複数の金融機関・不動産・株式など、手続き先が複数ある場合に効果を発揮する制度です。

まとめ:法定相続情報一覧図を活用して手続きを効率化しよう

法定相続情報一覧図は、一度作成すれば複数の相続手続きを同時並行で進められる強力なツールです。要点をまとめます。

  • 作成・発行は無料。書類収集の実費(3,000〜15,000円程度)のみかかる
  • 交付までは申出から1〜2週間が目安
  • 住所の記載は任意だが、記載後の変更はできないため慎重に判断する
  • 続柄を「子」と記載すると相続税申告に使えないため、税申告も予定している場合は「長男・長女」等の戸籍どおりの記載を選ぶ
  • 保管期間は5年間。期間内なら追加交付・再交付が無料

相続手続き全体の流れや必要書類については、こちらの記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

👉 【完全ガイド】相続手続きの流れと必要書類を徹底解説

相続税の計算や節税対策については、こちらもあわせてご参考ください。

👉 相続税の計算方法と節税対策|税理士が教える実践テクニック

よくある質問

Q1. 法定相続情報一覧図に有効期限はありますか?

法令上の有効期限はありません。ただし、銀行や証券会社などは独自に「交付から3か月以内」「6か月以内」などの利用期限を設けている場合があります。手続き先の各機関に事前に確認することをお勧めします。なお、法務局での保管期間は申出日の翌年から5年間で、この間は無料で再交付を受けることができます。

Q2. 法定相続情報一覧図は相続放棄した人も記載しますか?

相続放棄をした方も記載します。一覧図はあくまでも「戸籍に基づく法定相続人の関係図」であり、その後の意思決定(相続放棄・遺産分割の結果)は反映されません。ただし、相続廃除(家庭裁判所による相続権のはく奪)を受けた方は記載不要です。

Q3. 郵送だけで全ての手続きを完了できますか?

郵送による申出と交付の受け取りが可能です。申出時は戸籍謄本の原本を送付するため、紛失リスクを避けるためにレターパックなど追跡可能な方法での郵送をお勧めします。交付を郵送で希望する場合は、申出書にその旨を記入し、返信用封筒と郵便切手(またはレターパック)を同封してください。

Q4. 申出から何日で受け取れますか?

法務局によって異なりますが、一般的には申出から1〜2週間程度かかります。書類に不備があった場合は補正対応が必要になり、その分時間がかかります。相続登記の期限(相続を知った日から3年以内)が迫っている場合は早めに手続きを始めることをお勧めします。

Q5. 一覧図を作成した後に相続人の住所が変わったらどうなりますか?

法定相続情報一覧図に住所を記載した場合、その後の住所変更を理由とした再申出はできません。住所が変わった相続人がいる場合は、新しい住民票を別途添付することで手続きを進めることになります。このリスクを避けたい場合は、最初から住所を記載しない選択も有効です。

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